ディングル半島はアイルランド南西部のケリー州に位置し、大西洋に向かって南西に突き出た半島です。
ディングル半島の西の端に位置するダンモア・ヘッド(Dunmore Head)はアイルランド島の最西端であると共に、ヨーロッパ最西端の地でもあります。
ケリー州の州都トラリーの町の郊外のブレナービル(Blennerville)にあるブレナービルの風車(Blennerville Windmill)。
トラリーはケリー州の中心となる町でもあり、ディングル半島への入り口となる町でもあります。
ブレナービルの風車は高さが21メートルもあるとても大きな風車です。
ヨーロッパで最も高い風車の一つに数えられています。
ブレナービルからN86*を通ってディングルの町へ向かう途中で通り過ぎた「キャンプ」という村。*ディングルの町へと通じている国道
キャンプでキャンプしましたって、くだらない駄洒落を言いたくなった時にここに泊まろうかな?なんてことを考えつつ通り過ぎました。。
なにげにこの村はディングルを代表する山の一つである「スリーヴ・ミッシュ・マウンテンズ(Slieve Mish Mountains)」への拠点となる村なので、登山者客など観光客向けの宿泊施設やキャンプ場などが整っています。
キャンプからちょっと行ったところには「インチ」という村への道しるべがありました。
インチまで何インチ?って駄洒落はアイルランドでも通用するのでしょうか?
インチは綺麗なビーチで有名なディングル半島有数の景勝地のひとつです。
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ディングルの町に入る前にぜひ寄りたかったのがこの「アナスコール(Anascaul)」の町でした。
上の標識にも書いてありますが、ここは「トム・クリーン」という南極探検家の出身地として知られています。
トム・クリーンは世界初の南極点到達を目指すロバート・スコット率いるイギリスの極地探検隊の一員として、南極に行った初めてのアイルランド人です。
スコット隊での活躍、スコット亡きあとのイギリスの極地探検隊での活躍が評されイギリス王室より多くの勲章を授与されました。
南極探検から引退した後は故郷のアナスコールに戻り「サウスポールイン(South Pole Inn = 南極点宿)」という宿屋を開業し亡くなるまで営んでいました。
トム・クリーンは生涯を通じてとても謙虚な人だったそうです。
アナスコールに戻ってくると、受賞したメダルを全てしまい込み、南極での経験を語ることはほとんどなかったようです。実際にクリーンがアイルランドのマスコミから、自身の南極での活躍について取材を受けたという記録は残っていないそうです。
トム・クリーンが自身の功績について語らなかったのには、アイルランド人でありながらイギリスの探検隊に加わったり、イギリス王室から表彰されるのは不適切と考えたからだったという推測もあるそうです。
60年以上時代を経て、2001年に出版された本が大きな話題を呼びました。
トム・クリーンの人生を描いた「アン・アンサング・ヒーロー(An Unsung Hero)*」という本です。
*称賛されたことのないヒーロー、または縁の下の力持ちといった意味だそうです。
この本の出版が彼の功績の再評価につながったそうです。
私がトム・クリーンの存在を知ったのは、アイルランド滞在中にたまたまテレビで見た彼の人生を描いたドキュメンタリー番組でした。
その番組が新しいものだったのか、古いものの再放送だったのかは分かりませんが、その番組を見たのがきっかけでアナスコールに行ってみたくなりました。
アイルランドのゲール語放送局TG4で放映されたトム・クリーンのドキュメンタリー番組。
南極から戻ったトム・クリーンが営んでいた宿屋「サウスポールイン」。
現在はパブとして営業しています。
サウスポールインの中です。普通のパブです。食事も出来ます。
パブの壁には南極で撮影された数多くの写真が飾られています。
トム・クリーン・コーヒー(Tom Crean Coffee)というのがメニューにあったので頼んでみました。
これがトム・クリーン・コーヒー。
コーヒーにウィスキーを混ぜて上にクリームを載せたものです。
って、早い話がアイリッシュ・コーヒーと全く同じものです。
付け合わせのペンギンビスケット*はアイリッシュコーヒーとの差別化を図るため?南極感をだすため?
*イギリスのマクビティが出しているビスケット。日本でも出すべしと思う超うまなビスケットです。ペンギンビスケットのサイト
ディングルの町にある地ビール工房「ディングルブルワリー」は「トム・クリーン」という名前のラガービールを出しています。
よく絵葉書でも見るこの「ダン・フォーリーズ・パブ(Dan Foley's Pub)」もアナスコールにあります。残念ながら現在は営業はしていないようです。
アナスコールのお隣のリズポール(Lispole)のメインストリート。
この村の速度制限標識はアイルランドあるあるな標識。片方は60kmで、もう片方は100km。いったいどちらのスピードで走ったらいいのでしょう?(ちなみに片側一車線道路です)
この村の次の町がディングルの町です。
いろいろとありましたがようやっとディングルの町に到着(笑)
ディングルの町中の個人商店のショーウインドウ。
バリーズティー(Barry's Tea)の箱だけが並べられているのですが、すごくお洒落に見えます。
バリーズティーはアイルランドでよく飲まれている紅茶のブランドの一つです。
ディングルといえば何と言っても「マーフィーズ」。
ディングル発祥のアイスクリーム屋さんで、ダブリンやゴールウェイにも出店していて人気があるようです。
ディングルのスーパーマーケットの店内。
ディングルはアイルランド語を日常的に話しているエリアなので、色々な所にアイルランド語が書かれています。
この写真の左上の「Breakfast Cereals (朝食用シリアル)」の下に書かれているのがアイルランド語です。
公共の道路交通標識などでアイルランド語と英語の二か国語で表記してあるのは珍しくありませんが、スーパーの棚の二か国語表記はアイルランド語を使っていない地域だとあまり見ないような気がします。
ディングルの観光案内所(ツーリストインフォ)の前にあるイルカの像。
「フンギー(Fungi)」というイルカの像で、長年ディングルの港の近くに住み着いて観光客を楽しませてくれたイルカなんだとか。
ディングルの港からはイルカ見物(ドルフィン・ウォッチング)やクジラ見物(ホエール・ウォッチング)のツアーが沢山が出ています。
一旦ディングルの町を離れて、登山の下見も兼ねてブランドン山の方へ向かいます。
ディングルの町からブランドン山の麓のクログヘーン(Croghane)の村を結ぶR569の途中には「コーナー峠(Conar Pass)」というつづら折りの峠道があります。
車一台がようやく通れる切り通しの崖に面した峠道を通るのは、なかなかのスリルがあって楽しいです。
峠の上には絶景ポイント(ビューポイント)があります。
切り通しの崖の下を通るコーナー・パス。対向車とすれ違うための待避所が何か所かあるのですが、運が悪いと(?)待避所まで何百メートルもバックしないといけないこともあります。
コーナー・パスの最上部の道路上に書かれたゲール語の道路標示。
「MALL GO」とは「Slow(速度を落とせ)」という意味だそうです。
ディングル半島最高峰のブランドン山の登山口の近くから眺め。
前に見える山はストラッドバリー山(Stradbally Mountain)という山だと思います。ディングル半島にはブランドン山以外にも登りがいのある山がいくつもあります。代表的なのものには、半島の南東に聳えるスリーヴ・ミッシュ・マウンテンズ(Slieve Mish Mountains)と、半島の中央に聳えるストラッドバリー山などが知られています。
ディングル半島の見どころの多くは西側に集中しています。
特にディングルにはオガム・ストーンという4~5世紀のアイルランドやスコットランドで用いられた古いアルファベットが刻まれたスタンディングストーン(立石)が多く残っているような気がします。(他の地域にもあるのでしょうが、ディングルだと犬も歩けば~のごとくオガム・ストーンをそこかしこで見ることができます)
ただしオガム・ストーンは観光ガイドブックなどには紹介されることはほとんどありませんし、分からない人にはただの石に過ぎません。
ディングルの町から西に少し行ったところにあるColaiste Ideという全寮制の女子高の敷地内にあるのが、この"Colaiste Ide Ogham Stones"です。
計7基のオガムストーンが一緒に立っている貴重な場所です。
石に刻まれている横線がオガム文字です。
学校の敷地にある遺跡とあって、オガム文字の読み方が記された解説板が立っています。
オガム文字のアルファベット一覧です。
これがオガムストーンのあるColaiste Ideの校舎。全寮制でアイルランド語だけで教育する学校だそうです。所謂アイルランドで名門高校と呼ばれるような所にはこのような学校が多いです。
これも確かディングルの町を出てちょっと行ったところにあったスタンディングストーンです。普通の民家の庭先に立っているので、あまりしげしげと眺めることができませんでした・・
アイルランドだと普通の民家の庭先にドルメンなどの遺跡があることは珍しいことではありません。
ここはダンモア岬(Dumore Head)というアイルランド島の最先端の地。
ヨーロッパ最西端の地でもあります。
前に見える島はブラスケット島という島で、かつては数百人の人が暮らす島でしたが、現在は無人島となっています。
観光船が出ていてディングルの人気観光スポットのひとつになっています。
アイルランド島最西端のダンモア岬にもオガムストーンが立っています。
こんな最果ての地に昔から人が住んでいたかと思うと驚きです。
ダンモア岬のオガムストーンに刻まれているオガム文字。
ダンモア岬にはスタンディングストーンも立っています。
ダンモアヘッドには小さな小屋も建っています。
昔の漁師の人が一時的に使う番屋のようなものなのかもしれません。
小屋の中はこんな風になっていました。
小屋の中から外を見るとこんな風に見えます。
そしてアイルランド最西端の地にもお馴染みの羊さんたちが居ました。
私を見るなり逃げて行ってしまいました・・
せっかくアイルランド島の最西端、ヨーロッパの西の果てに来たので、出来る事なら可能な限り西の果ての果てに立ちたいと思い、海に突き出た岩場を前へ前へと進んでみました。
ダンモア岬の少し先にはダンキン(Dunquin)という小さな船着き場があります。ダンキンという場所を知らなくても、この場所を見たことをある人は多いと思います。なぜなら、
この絵葉書に写っているのが、上のダンキンの船着き場なのです。
この絵葉書は空港やツーリストインフォ、本屋などそこら中に置いてあるので、アイルランドに住んでいたり旅行に来てこの絵葉書を見たり、買ったりしたことのある人は相当居るような気がします。
ぜひ羊の大群を見てみたいと思い、ディングル滞在中何度かここで足を停めてみたのですが、残念ながら一度も羊の大移動を見ることはありませんでした。
ダンキンの船着き場で羊の大移動を見ることはできませんでしたが、ダンキンの船着き場から少し北側に行ったところで、羊の大移動に出くわしました。
実はこれからダンキンの船着き場に行くところとかだったらショックですが・・
羊の大群が押し寄せてくる光景はなかなか迫力がありました。
道の真ん中に立っているのが飼い主さんです。
これから牧場に放すのか、牧場から引き上げるところか分かりませんが、飼い主さんの合図で羊たちが一斉に走っていきます。
羊の向かう先のはるか先に小さな島が見えるのですが、ひょっとしてスケリッグマイケルでしょうか?
ディングル半島は1970年に公開された「ライアン娘」映画の舞台だそうで、ロケ地として使われた場所にはプレートが設置されています。
撮影スポット巡りをする観光客もいるそうです。
最近ではスターウォーズのセットがディングルとスケリッグ・マイケル島に組まれ、ディングルの新しい観光名所になっているようです。
ディングル半島の西側の海沿いもコーナーパスに負けじと(?)、カーブの連続する細い道が多いです。
反対側はこんな風に見えます。
これは「ストーンハウス・レストラン」というレストランです。
多分遺跡とかそういうものではないと思います。
屋根まで石で出来ている、見た目はすごいインパクトのある建物です。
味もインパクトがあるのでしょうか?
まだ一度も入ったことがありません。
上のレストランの先にあるのがこのガララス礼拝堂(Gallarus Oratory)です。
こちらは正真正銘の遺跡です。しかもこの辺りではかなり有名な遺跡です。
6世紀から9世紀くらいに建てられたと言われています。
ガララス礼拝堂が建つ敷地内には、他にも色々な遺跡を見ることが出来ます。
遺跡として管理されていない、牧草地のようなところにもオガムストーンやらスタンディングストーンを見ることができます。
これは「3姉妹(スリーシスターズ)」の近くにあったオガムストーン。
上のオガムストーンに刻まれているオガム文字。
上のオガムストーンの近くにある「三姉妹(スリーシスターズ)」。
三姉妹(スリーシスターズ)とはディングル半島の北西の端にある、3つの山のことで西側からBinn Hanrai、Binn Meanach、Binn Diarmadaの順で連なっています。独特の山並みはケスタ地形というもので、緩く傾斜し、交互に重なった硬軟の地層が差別侵食を受けた結果、非対称な丘陵が連続して形成された地形とのことです。
スリーシスターズを地図で見るとこんな感じになっています。
一番右側のBinn Diarmada(ディアマダ山)の最上部はスリルがありそうで、登ると面白いかも。
こちらは穴の開いた2基のスタンディングストーン。R559に面して立っているので気が付きやすいと思います。土台の新しさからいって遺跡としてはそれなりに価値のあるものなのかもしれません。
穴を覗くとこういう風に見えます。
上のスタンディングストーンの近くのビーチです。
上のビーチでは釣りをしている人たちがいました。
何が釣れるんでしょう?
ディングルの田舎の光景。
ディングル半島はディングルの町を離れればどこも田舎なんですが、こんな感じの小さな集落って私の住むクレア州のフィークルの方にはないので、とても新鮮に見えます。
山(丘)の上に見える白い点々は羊でしょうか?
海沿いの道の標識。ディングル半島の海沿いの道はガードレールのない箇所も多いです。街灯もないので夜に走るのは怖そうですね。
半島の西側の道路で繋がっている一番奥まで来ました。
この先は車で行くことは出来ません。
この写真の東側にはブランドン山が聳えています。
ディングルの日の入り。
太陽が海の中に吸い込まれていきそうな、そんな感じの日の入りを見ることができました。
ディングルはもう何回も来ているのですが、初めて来たときに泊まったところはディングルの町ではなくトラリーに泊まりました。
車があればトラリーとディングルはそれほど遠くないし、トラリーの方がスーパーやガソリンスタンドも遅くまで空いているので、ディングルの後にリムリックやクレア方面に行くのであればトラリーに泊まるのもありだと思います。
初めてディングルに来たときに泊まったトラリーのホステル
ドミトリーの5人部屋でした。
ホステルのキッチン。
ホステルの食堂
マナー・ウエストにはハルフォーズというカー用品店があります。
ここは自転車の部品、特にワイヤー類とかスペアのネジ類、チューブ、タイヤといった用品を単体で買えるので便利です。
アイルランドだと意外とこの手のお店が少ないので、自転車乗りには有難いお店です。
ワイヤーキャップ(ワイヤーがほつれないように先端にくっつける小さなキャップ)も10個セットとかで袋詰めされて売っています。
ラジオやテレビで頻繁にCMを流しているハーベイ・ノーマンという電気屋もこのショッピングセンターにあります。
CMをしょっちゅう目にするので、お店はしらないけどCMは見たことあるという人も多いかもしれません。
私もここに来るまで、CMで知っていても実店舗は一度も見たことがありませんでした。
ハーベイ・ノーマンのテレビCM
上のCMを見ていると日本の某ビッ○カメラのCMを思い出します。
かなり昔のビックカ○ラのCMですが、どうでしょう?似てますかね?
マナーウエストのショッピングセンターにはアイルランドでは珍しい?「グロリアジーンズ」が入っていて、よく寄っていました。 実は日本でも珍しいのかもしれませんが、埼玉の実家の近くのショッピングセンターにも入っていたので、日本が恋しくなるとマナーウエストのグロリアジーンズに行っていました。
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