フィドルの基本情報 (アイリッシュ、アイルランド音楽)
【楽器や基本的な演奏法について】

 

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目次

 

 

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楽器について

 

フィドル(ヴァイオリン)本体について
(about the instrument)

 

アイルランド(アイリッシュ)音楽で使われるフィドルは、楽器自体は普通のバイオリンと全く同じものです。

 

色々な値段のバイオリンがありますが、1万円のバイオリンでも100万円のバイオリンでもフィドルとして弾くことが可能です。

 

どんな楽器であれ、フィドル奏者が弾くとフィドルに、バイオリン奏者が弾くとバイオリンになるのです。

 

私自身は日本製のものを使っています。

 

アイリッシュ フィドル
日本製のフィドル
アイルランド音楽 フィドル
2012年製です

 

よく「どういうのがフィドル向きなバイオリンですか?」という質問を受けることがあるのですが、私自身は楽器のことはあまり詳しくないので、これならフィドル向き、これはフィドルには向いていないとの断言はできません。

 

個人的には好みの音色が出る楽器を選ぶのが一番だと思いますが、これから始める人で音色の違いがよく分からないという方などは、値段と見た目で決めてしまってもいいのではないかなと思います。

 

楽器の購入に関してはこちらのページをご覧ください。

 

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弓について (about bow)

 

フィドルを演奏するためには楽器本体と合わせて弓も必要です。

 

弓も色々なものがあるので、どれを選んでよいか迷うものです。

 

弓に関しても「アイリッシュを弾くのならこういう弓」というのはないと思います。

 

最初のうちは色々なのを試しながら、自分に一番しっくりくる弓を見つけていくしかないと思います。

 

私自身はコーダボウというメーカーのカーボン製の弓を使っています。

 

私がアイルランドに住んでいたときに、お隣に住んでいた名フィドラー「ヴィンセント・グリフィン」もよく私の弓を借りて、「これは良い弓だ」と言っていたので、わりとアイリッシュ向きな弓と言えるのではないでしょうか。

 

フィドル 弓 ボウイング

カーボンできた「弓」コーダボウ(Coda Bow)

コーダボウ

 

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弦やその他の用品について

 

弦 (strings)

 

フィドルを弾くには、バイオリン本体と弓以外に松脂などの用品も必要です。

 

弦は購入する時に張られていますが、弦にもいろいろな種類のが出ていて、どれを使ってよいやら悩むものです。

 

弦には:

・ガット製

・ナイロン製

・スチール製

の3種類があります。

値段はガット製がもっとも高く、スチール製が一番安いです。

 

弦も材質の違いでアイリッシュに向いている、向いていないとは言えないので、自分の好みの音が出せる弦を選ぶのが一番だと思います。

 

私自身はダダリオの「ヘリコア」というスチール製の弦を使っています。

フィドル 弦
ダダリオのヘリコア

 

松脂 (rosin)

 

弦以外に必要なものとして松脂があります。

 

松脂も色々なものが出ていますが、私は「アルシェ」というメーカーの和柄デザインの松脂を使っています。

 

これを選んだ理由は特になく、和柄だとアイルランドでウケそうかなと思って買ってみました。

 

私のお隣に住むフィドル弾きのおじいちゃんにお土産で持っていったら、けっこう喜んでいました。

 

松脂はただの弓の毛が弦の上で滑らないようにするためのものなので、その役目を果たせるものであれば何でも良いと思います。

フィドル 松脂

和柄デザインが特徴のアルシェの松脂

 


 

肩当て (shoulder rest)

 

その他にバイオリンの演奏に使う用品として、「肩当」というものがあります。

 

フィドルでは肩当を使わない奏者は珍しくはありません。

 

もちろん肩当てを使う奏者も居ます。

 

使う使わないは奏者の自由ですので、使いたい人は使ってみるといいと思います。

 

肩当ても色々なものが出回っていて、どれがいいとは一概には言えません。色々なものを試してみて、自分にしっくりくるものを選ぶといいと思います。

 

肩当 フィドル アイリッシュ

色々な肩当て

 

フィドル ヴァイオリン 肩当

 


 

テールピース (tailpiece)

 

テールピースはヴァイオリンの尻尾側で、弦を留める部分です。

 

テールピースにはアジャスターという弦を微調整できるパーツが付いているものと、付いていないものがあります。

 

クラシックヴァイオリンでは一番細いE線にだけ、アジャスターを付けることが多いのですが、アイリッシュでは4本全てにアジャスターを付けることが多いです。

 

騒がしいパブなので弾く時など4本全てにアジャスターが付いていた方が、簡単に微調整が出来て便利です。

 

テールピースは後からいつでも交換できるので、最初からアジャスター4つ付いているテールピース付きのバイオリンを買う必要はありません。

 

気に入ったバイオリンのテールピースがアジャスター付きでなければ、買うときに交換してもらえば大丈夫です。

 

もちろんアジャスターのないテールピースの方がお好みであれば、あえてアジャスター付きに交換する必要はありません。

 

アイリッシュ音楽 フィドル テールピース

4本の弦全てにアジャスターが付いたテールピースと、E線だけに付いたテールピース。クラシックだとアジャスターはE線だけに付けることが多いようです。

 


 

チューナー (digital tuner)

 

チューナーは調弦(チューニング)するときに使います。

音叉やピッチパイプなどもありますが、最近は電子式が主流です。

スマホのアプリでも代用できます。

 

フィドル チューナー ヴァイオリン
色々なチューナー
フィドル アイリッシュ チューナー
スマホのチューナアプリ

 


 

楽器拭きクロスなどお手入れ用品 (cleaning cloth)

 

練習の後に楽器を拭くための布があるといいと思います。

 

布は色々なもので代用できると思いますが、楽器屋さんで専用品を買ってきてしまうのが手っ取り早いです。

 

私は楽器拭き用クロスはフィドル本体用に加えて、弓用と弦用を別に用意しています。

 

弦に付いた松脂を拭きとった布で楽器を拭くと、楽器がべたついてしまうからです・・・1枚の布の使う部分を決めて、使い分けてもいいと思います。

 

フィドル クロス アイリッシュ

楽器拭き用のクロスいろいろ。白い大きい布が楽器本体用。紫のが弓用。白い小さいのが弦用。弦用はガーゼです。一緒に写っているのは艶出し用のポリッシュと、コンポジション(ペグチョーク)です。

 

これからフィドルを始める方は、楽器を購入される際に楽器本体や弓と合わせて、上記に挙げた用品も揃えると良いと思います。

 

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基本的な演奏法について (basic techniques)

 

 

フィドルは弓で弦を擦って音を出す楽器です。

 

バイオリンは音を出せるようになるまでが、難しい楽器と言われています。

 

実際のところ弓の毛を弦に当てて、少しでも動かせば音は出るので、「音を出す」ということ自体はそれほど難しくありません。

 

ただ"綺麗な音"を持続させたり、一定の音量や音質で「音楽を奏でる」となると、そう簡単ではありません。

 

クラシックバイオリンは、弓で弦を擦って「ただ音を出す」だけでなく、色々な音の出し方、色々な弓の使い方を覚えないといけないので、クラシックの経験のない私からみるととても難しく見えます。

 

アイリッシュ音楽のフィドルはとりあえず、弓で弦を擦って「ただ音を出す」ことさえ出来れば"とりあえず何とかなる"ので、クラシックバイオリンに比べればずっと簡単です。

 

ですが、アイリッシュのフィドルよりもずっと高度なクラシックバイオリンを弾ける人が、アイリッシュを簡単に弾けるかというと必ずしもそうはいかないものなのです。

 

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弓の持ち方について

 

クラシックバイオリンの世界では一応何となく決まった弓の持ち方があるようですが、アイリッシュフィドルでは弓の持ち方は演奏者によってまちまちで、これが正しい持ち方というのは存在しません。

 

フィドル 弓 ボウイング

アイルランドを代表するフィドル奏者マーティン・ヘイズの持ち方

 

フィドル バイオリン アイルランド

ミシェル・オブライエン(Michelle O'Brien)の弓の持ち方

 

ミシェルはアイルランドを代表するフィドル奏者「トミー・ピープルズ(Tommy Peoples)」の愛弟子で、トミー・ピープルズそっくりに弾くのが特徴です。この弓の持ち方はトミー・ピープルズも使う「弓をひっぱたいて」弾くトリプレットのための持ち方だそうです。(本人談)

 

アイリッシュ音楽 フィドル奏者

こちらは師匠の「トミー・ピープルズ」

ほぼ同じ弓の持ち方をしています。

 

フィドル 弓の持ち方

クラシックバイオリンの弓の持ち方

 


 

・色々な弓の持ち方①

 

私は現地のフィドルの教室に通って習ったのですが、弓の持ち方に関しては「好きに持っていいよ」という感じで、持ち方についてとやかく言われたことは一度もありませんでした。

 

先生の持ち方や他の生徒さんの持ち方、セッションで弾いている人たちの持ち方を見ながら見よう見まねで持ち方を覚えていきました。

 

アイリッシュ フィドル 弓

始めの頃はこんな持ち方で弓を持っていました。

 

この持ち方でもとりあえず弾けます。

 

・色々な弓の持ち方②

 

フィドルには理論に囚われない(?)弓の持ち方がいろいろとあるようで、これは国際的に活躍するマーティン・ヘイズがワークショップで見せてくれた弓の持ち方です。

 

マーティン・ヘイズのワークショップは日本人の多く参加していると聞くので、マーティンがこの持ち方で持っているのを、見たことがある人も居るのではないでしょうか。

 

アイルランド音楽 フィドル

マーティン・ヘイズがワークショップで見せてくれた弓の持ち方です。

 

この持ち方でもとりあえず何とか弾けます。

 


 

・色々な弓の持ち方③

 

これもマーティン・ヘイズのワークショップで見せてもらった持ち方です。

 

フィドル 弾き方

 


 

色々な弓の持ち方④ - 弓を逆さに持って弾いてみる

 

最後は弓を逆さに持って弾く弾き方(練習法)です。

 

弓を逆さに持って弾くと、弓の重みで自然に毛が弦に食いついていくので、指(人差し指)に無理に力を加えなくても、ハリのある良い音を出すことができます。

 

私はこれを自分のレッスンの初日に習いました。

教えてくれたのはこの人です。

 

 


 

 フィドルは上の動画に出てきたような持ち方でも、とりあえず弾けるには弾けるのです。

 

「こうやって持てなければ弾けない」と考えるのではなく、「こうやって持っても弾ける」考えたほうが、自分独自のスタイルに繋がって良いのではと思います。

 

アイリッシュのボーイングについて詳しく知りたい方はぜひ一度レッスンを体験してみてはいかがでしょうか。

 

詳しくはこちらよりお問い合わせください。

 

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基本的なボウイング
(リールの場合)
basic bowing techniques for playing reels

 

アイルランド音楽には「リール」や「ジグ」など色々なタイプの曲があります。

 

アイリッシュ音楽で弾かれている曲の種類はこちらページもご覧ください。

 

曲のタイプが異なると演奏法も異なります。

 

全てのタイプの曲について、ここで解説するのは大変なので、アイルランドで一番よく弾かれている「リール」というタイプの曲の基本的な演奏法について少し紹介してみたいと思います。

 

「リール(Reel)」はアイルランドで最も盛んに演奏されているタイプの曲です。

 

楽譜に書くときは、ほとんどの場合で4分の4拍子で書かれます。

 

楽譜に書くと「1小節間に8分音符を8つ弾く」フレーズが連続することが多いのですが、"楽譜通り"に音と音の間を均等に弾いてしまうと"ノリ"のない演奏になってしまいます。

 


 

 

譜例1

アイリッシュ音楽 楽譜

リールの基本的なリズムの例(クリックで拡大できます)

 


 

アイリッシュ的には以下のような感じで弾きます。

 

譜例2

アイリッシュ フィドル 楽譜

リールのリズムの出し方の一例(クリックで拡大できます)

 

これを曲の中でやると下のようになります。

 


下の楽譜が上の動画で弾いている曲の楽譜です。

ちなみにこの曲はマーティン・ヘイズから習いました。

 

譜例3

アイリッシュ音楽 楽譜 リール
クリックで拡大できます

 


 

アイリッシュの曲は楽譜に書かれたのを見ると、とても簡単そうに見えるのですが、アイリッシュなノリを出すとなるとそうは簡単にはいかないのです。

 

実際のリールのノリの出し方も人によって色々なので、色々な人の演奏を見たり聞いたりして、真似していくうちにコツがつかめるようになると思います。

 

ジグやホーンパイプなど曲のタイプが変わると、弾き方も変わります。

 

他のアイリッシュの曲のボウイングにも興味があれば、ぜひ一度レッスンを体験していてはいかがでしょうか。

 

詳しくはこちらよりお問い合わせください。

 

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基本的なボウイング(リール編) マーティン・ヘイズによる解説

 

アイルランドを代表する名フィドル奏者「マーティン・ヘイズ」によるリールの基本的なボウイングの解説です。(音声のみ)

 

 


 

装飾音について
ornametations used in Irish fiddle playing

 

 

・ロール (Roll)

 

 

装飾音はアイルランドの音楽の演奏における特徴のひとつで、色々な種類の装飾音が用いられています。

 

代表的な装飾音として「ロール」と呼ばれているものがよく知られています。

 

「ロール」を譜面に書くと以下のようになります。

 

譜例4

アイルランド音楽 楽譜
クリックで拡大できます

 

他の音のロールは以下の譜面のように弾きます。

 

譜例5

フィドル 楽譜
クリックで拡大できます

 

これをフィドルで弾く以下のようになります。

下の楽譜は上の動画で弾いている曲の譜面です。

 

動画と同じように弾くには「~」の記号が付いているところを、上の譜例45と同じように弾きます。

 

譜面に書くととてもシンプルな曲なのですが、ロールが入ると複雑に聞こえると思います。

 

 

譜例6

アイリッシュ音楽 楽譜

上の動画で弾いている曲の楽譜です。(クリックで拡大できます)

 


 

・トリプレット

 

アイルランドのフィドル奏法ではロール以外にも色々な装飾音が用いられています。

 

ロールと並んで代表的なものに「トリプレット」といわれる装飾技法があります。

 

トリプレットとは「三連符」の意味でアイリッシュフィドルでは、ロールの記号が付いたところを単音の三連符で弾くのが一般的な使い方です。

 

楽譜で表すと以下のようになります。

 

譜例7

アイリッシュ音楽 楽譜 フィドル

 

これを実際にフィドルの上でやると以下の動画のようになります。

 

下の楽譜は上の動画で弾いている曲の譜面です。

ロールの記号「~」のついている箇所を単音の三連符に置き換えると、上の動画と同じように弾けます。

 

フィドル ヴァイオリン 楽譜
クリックで拡大できます

 

アイリッシュフィドルではロールやトリプレット以外にも色々な装飾技法が用いられています。

 

興味のある方はぜひ一度レッスンを体験してみてはいかがでしょうか。

 

詳しくはこちらよりお問い合わせください。

 

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ポジション移動について

 

アイルランドの伝統曲のほとんどはファーストポジション内で弾ける曲ですが、ごくまれにポジション移動を必要とする曲もあります。

 

ポジション移動を必要とする曲は昔から存在したようで、アイリッシュの演奏家達の間で「バイブル」と呼ばれている「オニールズ1001 (O'Neill's 1001)」にもポジション移動を必要な曲が載っています。

 

この曲は作曲家としても有名なパディ・ファヒー(Paddy Fahey)も好んで弾くそうです。

アイルランド音楽 楽譜

アイリッシュ音楽界のバイブル「オニールズ1001」

アイルランド音楽のスタンダード曲が1001曲が収められています。

 

アイリッシュ音楽 楽譜

上の曲集にThe Contradiction Reelという曲が収められています

フィドルで弾くとポジション移動が必要になる箇所が出てきます。

(クリックで拡大できます)

 

 

フィドルで弾くとこんな感じになります。

ビブラートについて

 

ビブラートはクラシックバイオリンの世界では身につけるべき必要不可欠な技術となっているようですが、アイリッシュフィドルでは滅多に使う機会がありません。

 

とはいっても全く使わないわけではなく、「スローエア」というゆっくりした曲を弾くときなどにビブラートを使うこともあります。

 

ビブラートのかけ方も人によってまちまちで、クラシックの奏者ばりの大きなビブラートをかける人もいれば、ポードリック・オキーフ(Padraig O'Keeffe)のように指でなくアゴを振るわせることで、ビブラートをかける人もいます。

 

下の動画は私流のビブラートのかけ方です。

 

私の場合は指の先端だけを小刻みに動かしてビブラートをかけています。私のお隣さんのヴィンセント・グリフィンはビブラートのことを「スクイージング(squeezing)*」と呼んでいます。*指を"ぺこぺこ"とスクイーズさせるから

 


 

お勧めのCD

 

お勧めのアイリッシュフィドルのCDをこちらにリストアップしてみましたのでよかったら参考にしてみてください。

 


 

お勧めの教則本や曲集など

 

お勧めの教則本や曲集のリストをこちらでご覧いただけます。

 


 

フィドル奏者名鑑

 

こちらのページではアイルランドを代表するフィドル奏者を時代別、地域別紹介しています。100年以上前の奏者から若干17歳の奏者まで総勢105名の奏者を取り上げています。

 


 

まとめ

 

ここまでざっとアイリッシュフィドルの基本的なことについて、解説してきましたが、実際にアイリッシュフィドルの演奏を志すとなると、もっともっと知らなければいけないことが山ほどあります。

 

もし更にアイリッシュフィドルについて知ってみたい、弾けるようになってみたいという方は、ぜひ一度レッスンを体験してみてはいかがでしょうか。

 

詳しくはこちらよりお問い合わせください。

 

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